とある木材好きの漆塗り備忘録

どうも、ブログチーム所属の訓練生oです。
今回は漆塗り箸の「Denpuku」に興味をもってもらった方々の為に、Denpukuの内容について、私のいた時代の話をしようと思います。
実は私はkaienの就労移行支援に来る前にkaienの生活訓練にも所属していたことがあり、その時に漆塗り作業である「Denpuku」に携わっていたことがあります。
その為、大体1年前の情報ですので現在とは違うはずです、その点ご了承ください。

まとめると「私のDenpuku思い出話」です、了承いただける方のみご覧ください。

また、この話は私が以前書いたこちらの内容を前提としています。先にご覧ください。

1始まり「え、ここでも木材あるんですか!」

私はタイトルの通り、木材が好きで、アカシア、メープル、ケヤキなど、いろんな木材に触れていました。まぁ趣味です。それで生活訓練に来た直後、その拠点では「Denpuku」をやっている事を知り、すぐさま参加しました。
(※Denpukuは一部拠点でのみ開催しているプログラムです。開催については各拠点にお問い合わせください。)
私の拠点では週に1回、午後の訓練の時間(約2時間)にDenpukuを行っていて、そこに参加しました。
手先があまり器用でない私でもできる程度の簡単な作業だったので、すぐ慣れたのですが…

2下積み時代「先輩が参考にならない!」

一通りの作業を教えられた後、皆さん(5名程)と和気あいあいと準備していたのですが、参考になるものが本部からの資料のみでした。何故なら、先輩方のやり方が私の主義に反していたからです。そのやり方とは「色漆を分厚く塗ってきれいに仕上げる」というもので、「びっくりするほどマネしたくない」と思いましたよね。
というのも、私は木材毎に違う様々な木目が大好き過ぎて、染料を塗って木目を誤魔化す事が大嫌いなのです。「なぜ木材の木目を生かさないのか!木材なら木目生かせ!」がモットーなほどに、木工においてのみ強めのアンチ染料です。
その為、木材に塗る仕上げ材は必ず透明、それも食器に使える高価な食用油を好みました。できるだけ自然な風合いをと思っていたのです。それに木材には様々な色があります。木材を変えて色を変えることも私は好んでいました。
ですが郷に入っては郷に従え。使用する箸はキャンパスのような薄い色の木材なので染色にはピッタリ「漆がメインだから無難な木材はしかたない。ただ木目を活かしたい」と思いました。
それで、やり方を担当者に聞いてみると「色々試している、正解はない。一応資料あるから見る?」程度しかありませんでした。「漆の濃さは?」「何回塗るのが一番奇麗なの?」「この見本の作り方は?」と分からない事だらけでした。皆、自由に木目を殺して厚塗りするだけだったのです。私の主義に似た方はおりませんでした。
その為、当時の私は、色々調べながらやることを決意しました。ほぼ車輪の再発明をする
覚悟ですね。
まず、生漆は薄めて使ってもよさそうだと気づき「生漆は普通に使えば木目の生きた透明度のある茶色だ。では薄めればほぼ自然な色合いで行けるのでは?」と考えたのですよ。それが苦難を呼ぶとは知らずに。

3初期作成「仕上がらない!」

拭き漆は主に箸に週に1度薄く塗る作業を4回塗って仕上げるようなのですが、最初の方は薄めた漆を使います。薄めるには「テレビン油」で薄めます。綺麗な透明に見える8倍薄めた漆を四度重ね塗りしましたが、3度目以降は乾きませんでした。そして原因は「薄めすぎて固まらない」という結論になりました。漆は空気中の水分と化学反応を起こして固まるので、漆が少なかったら固まりません。5回目に2倍薄めた漆、6回目に漆原液を塗って完成としました。この時の箸を「金の箸」と呼んでいます。
ようやく完成した箸を前に感無量。ほぼ2ヶ月かかりましたのでね、あの輝きは忘れません。濃い茶色ではなく薄い黄金ですからね、スタッフの方も驚いて一つ見本として所属していた拠点に置かれてます。

4 前期「とにかく塗る!」

先輩がまだいた頃が一番弾けてました。次は4回塗りで終わらせようとマニュアル通りに作業したり、4回で金色が出せるか試したりと工業的観点で作業していたのですが、なかなか難しい。思い通りの色を出すのと、作業効率化は相反するもので、手間を省くと色が雑になるのです。どこまでが許容できるかをさぐることになりました。
とはいえ仲良くなった先輩と過ごす時間はとても有意義なものでした。

5中期「12膳は限界突破」

やっと作業に慣れてきた頃、世代交代が始まりました。先輩が卒業し、新人が数人来ることになりました。この頃は小規模(2-3人)のグループでした。それで、新人が少なく教えることもあまりないので塗る数を増やしていました。すると、仕事が増えて『もういない人の分もやっておいて!』と言われ、新色のテストを頼まれたので渋々木目を生かす方法を研究する事になり、なんやかんやで一度に12膳塗るという暴挙に出ました。それぞれ塗った回数や色の違いなど、四人分の作業をしているような気分でした。二度とやりたくありません。半分でいいですよほんと。

6後期「新人研修!マニュアル!託すって大変」

私にも生活訓練の卒業が見えてきました。それでも漆塗りは行っていたのですが、ついに新人が沢山入ってきて大所帯(6人程度)に。新人にどんな色を塗りたいか聞くと大体「金に近い薄い茶色」と答えるので、「それは私の編み出したやり方なんですよ」とやり方を伝えることに。「マニュアルとは違うんですけど」「漆を塗った後は、とにかく拭いてください、薄く塗りましょう」と色々吹き込む日々でしたよ。そして気づく「マニュアルで残したほうが良いか」と。
簡易マニュアル自体は完成したものの、やり方を知ってる人向けになってしまったので初心者向けではなかったのです。あくまで私の実験の記録となっていました。
車輪の再発明は避けられても新人を鍛えることは出来なかったのです。
さすがに初心者用マニュアルに手を付ける時間は無かったので、知識だけ伝えて卒業することとなりました。

7終わりに

以上、備忘録でございました。
和気あいあいとした雰囲気で皆思い思いに作業をする。
それがDenpukuでした。
出入り自由ですし、本当に暖かい場所でした。
それに、自由に研究させてもらいましたしね。本当に感謝するばかりです。

以上となります。
この記事でDenpukuへの興味を深められたなら幸いです。
それではまたどこかで。

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