就活体験記 経歴に惑わされずに「興味」「得意」を分解する ~前編~
1章 Kaienに入所するまで
自己紹介
名前:S.S
年齢性別:20代女性
通所期間:約10ヶ月間
診断名:ASD(自閉スペクトラム症)
主な症状:
- 視覚過敏
- 口頭での指示理解や報連相が苦手
- 工程が複雑な指示の理解に時間がかる
- 過集中
趣味:読書(主にデザイン・歴史・心理学・小説詩歌)/ 文芸同人活動 / アラビア語学習 / インド・アラブ・ペルシャ・トルコ料理屋巡り / ベリーダンス鑑賞 / インド映画鑑賞 / 美術鑑賞 / 散歩 /ラジオやPodcastの聴取 / 歌唱 など
性格:好奇心旺盛。対人コミュニケーションは苦手だが、同人イベントに出店して場数を踏んで改善中。
経歴
美術系の高校→美術大学→業務委託でデザイン業務を受託と、美術とデザイン一筋でやってきました。この経歴は珍しいため、数ヶ月前にKaienから利用者インタビューを受けました。ここではかなりとんがったエピソードがあります。
業務委託は、大学4年の春から始めました。新卒での就活は上手くいかなかったのですが、幸いにも大学のOGの方から案件をいただき、ITサービスにデザイン業務で携わりました。当時は業務委託をこなしながら、卒業制作も新卒就活も並行して行っていました。
業務委託は流れで卒業後も続きましたが、任される業務が重くなるにつれてフルリモートでのコミュニケーションが難しくなってきました。フルリモートなので議事録にはなんでも残りますが、オンラインミーティングで咄嗟に意見を話したりスケッチを出すことができず、相手を困らせてしまうことが増えてしまいました。
既卒就活も継続していましたが、そちらも上手くいかなかったので障害者雇用での就活も考えはじめました。
そこで、発達障害者に特化したKaienに出会い通所することになりました。
2章 Kaienで学んだこと
①報連相
定時報告をする際は、メモを見て話していました。口頭での報連相の記憶力が弱いからです。企業実習のフィードバックで「報連相が少ない」とコメントをいただいたこともありました。そのときは「報告」「連絡」「相談」と分けてなぜできないのか分析しました。
客観的な意味と主観的な感想を表にしてみると、相談>連絡>報告の順で興味深い行為だと認識していました。報連相は興味深いからするのではなく、業務の進行に必要だからするものなので、この考えを改めるために表の一番下のような考え方をするようにしました。「報告」は今でも改善中です。
②基本的な事務スキル
美大時代はなんでも書類をAdobeソフトや、Mac内蔵のPagesで作ってしまっていたため、WordやExcelやPowerPointに触れる機会がこれまでありませんでした。Windowsにも高校の技術の授業以来、数年ぶりに触りました。
関数は、大学時代の学外卒業制作展のプロジェクトや業務委託での報酬計算のときに、Googleスプレッドシートで使っていました。これまでは「関数」とは認識していませんでしたが、意外とデザインだけの時代も事務をしていたことに気づきました。セルフチェックは、デザインでもデッサンでもありました。遠くから離れて見たり、定規やデスケル(12等分の升目のプラスチックプレート)を当てていた感覚と似ています。
③デザイン登竜門など専門的なスキルの学習
入所から2ヶ月目には、デザイン登竜門に挑戦しました。知らない機能がまだまだあり、受講して良かったです。
3ヶ月目には、自主的にHTML/CSSを図書館で借りた本(HTML&CSSとWebデザインが1冊できちんと身につく本[増補改訂版] )から学びました。就活と並行しながら6ヶ月目には、ポートフォリオサイトをWEBに公開しました。大学時代にHTML/CSSの授業は受けていましたが、なにも理解できず苦手意識がありました。しかし、自分のペースで学ぶことで着実に実践的な知識が身につき、コーディングの楽しさがわかるようになりました。
④個性は全員にあるもの
美術の高校や大学の教育の悪いところなのですが、やたらと「一般大」「美大」と分けて話されます。「一般大」出身の人にも、英語が得意・プログラミングが得意・司会進行が得意・水泳が得意など個性はあるはずです。
様々な個性のある通所者と話すことで、「美大生は真剣に個性を磨いているが、個性がなく磨く発想すらない一般大の学生は劣っている」といった差別意識が明らかに間違っていると再確認しました。誰もがより良く生きるためにインパクトの大小はあれど努力しています。創作活動ができなくても、資格を取得することなども努力で掴み取った個性に間違いありません。
後編もどうぞお楽しみに。