就活体験記 就労未経験からデザイナー職への挑戦 ~後編~
こんにちは!ブログチームに所属していたKと申します。
こちらは、前回の就活体験記 就労未経験からデザイナー職への挑戦 前編の続きです。まだ読んでいない方はぜひ、前編を読んだあとにご一読ください。
前編では、私が就職活動を通じて大切だと感じたことは以下の5点のうち、「3. 自分に合う環境(会社)で求められる「スキル」を磨くこと」の途中までお伝えしました。
- 「障害理解」が最も重要で、それが就職活動の土台となること
- 「自己理解」を深め、自分に合う環境(会社)を見つけること
- 自分に合う環境(会社)で求められる「スキル」を磨くこと
- Kaienでの模擬職場を通じて「チームで働く」経験を積むこと
- 1〜4の成果について、面接で自分の言葉で伝えられるようになったこと
後編の今回は、
- 3章:自分に合う環境(会社)で求められる「スキル」を磨く ~訓練編~
- 4章:Kaienでの模擬職場を通じて「チームで働く」経験を積む
- 5章:1〜4章の成果について、自分の言葉で面接官に伝えられるようになる
についてお伝えしていきたいと思います。
3章:自分に合う環境(会社)で求められる「スキル」を磨く ~訓練編~
IT登竜門とデザイン登竜門を受講した私は、以下のことに興味を持ちました。
- HTML/CSSを使用してのコーディング
- IllustratorやPhotoshopを使用してのグラフィックデザイン
実際に訓練で行った勉強を説明していきたいと思います。
HTML/CSSを使用してのコーディング
まず、Kaien独自のプログラムである「HTML/CSS基本編」を行い、全体構造とそれぞれのタグの役割を理解して、Webサイトの更新や修正のスキルを身に付けました。
さらに、オンライン動画で専門スキルが学べる講座を受講し、簡単なWebページを一から自分の力で組み上げることを学んだり、レスポンシブデザインやJavaScriptの基本について学んだりしました。
IllustraterやPhotoshopを使用してのグラフィックデザイン
まず、ペンツールの扱い方やロゴの作り方、バナーの作り方などの基礎をオンライン動画で学びました。
その後、Illustratorに慣れるために毎日ロゴを1つ制作する自主制作を始めました。
これは『毎日ロゴ』(著者:石川竜太)を参考にしたもので、以下のルールを立てました。
- 1日1個ずつ、制限時間1時間内でロゴを作成する
- 「今日なんの日」サイトを見て、その日の記念日で気になったものをテーマにする
この自主制作はKaienの訓練日だけでなく、土日も含めて内定まで毎日作り続けました。
図3 毎日ロゴで制作したロゴ(抜粋)
毎日ロゴを作り続けていたところ、この取り組みを知ったクリエイティブコースの講師から、実践訓練としてデザイン登竜門のロゴを作成してみないかというお話をいただきました。
実践訓練ということで、実際の仕事と同じように納期を設定し、ロゴデザインのヒアリングから候補の提案、修正や納品までを経験させていただきました。
図4 デザイン登竜門ロゴ
このような訓練を行い、基本的なITスキルやデザインスキルは身に付きましたが、就職する上ではまだ以下の様な問題点が残っていました。
- こだわりの強さや優先順位をつけるのが苦手なことで大学時代に課題の締切が守れなかったこと
- 就労経験がないこと
この2つの問題点について、スタッフやクリエイティブコースの講師に相談をし、ブログチームに所属してチームで働くということを学びながら、アイキャッチ画像の制作やブログ投稿業務を通して納期を守る経験を積むことになりました。
4章 Kaienでの模擬職場を通じて「チームで働く」経験を積む
ブログチームではアイキャッチ画像の制作などのデザイン系の業務だけでなく、ブログ投稿業務やInstagramでの宣伝業務など様々なことを行いました。
ブログチームでは1ヶ月に4本の記事をあげますが、1本の記事を掲載するだけでも以下の5つのタスクに細分化され、それぞれの担当者が決まっています。
- 原稿作成
- 原稿の校正・バックアップ
- アイキャッチ画像の作成
- 投稿業務
- Instagramへの宣伝投稿
チャットやオンラインミーティングなどでコミュニケーションをとりながら、納期に間に合うようにタスクを完了させるという経験は、私にとって非常に大きな経験となりました。
また、ブログチームでは積極的に意見を出すことができたことも、自身の成長に繋がりました。
私はInstagram投稿に関して、Instagramからオンラインショップブログへの訪問者を増やすために説明画像を作成する提案をしました。それが採用され、実際に作成しました。
ブログへ誘導するための説明画像
5章:1〜4章の成果について、自分の言葉で面接官に伝えられるようになる
就労への準備
本格的な就活を行う前に、しごと財団主催の職場体験実習で、1週間事務の実習を受けることになりました。
就労経験がないため、実際の職場でどのような困りごとが起こるかを確認したり、フルタイムで働くことができるかを試したりするためです。
実習を行うことで、改めて自分の苦手なこと、得意なこと、そして職場での困りごとを整理できました。
また、求人に応募する前にマイナーリーグの説明会に複数回参加し、企業や選考過程について学びました。
就職活動の軸
就労移行支援に移ってから7ヶ月が経過し、周囲の方々に勧められて本格的に就活を始めることになりました。
私が就活の軸として考えていたことは以下の2点です。
- その企業に発達障害者の雇用経験が豊富で障害理解があること
- デザインやITなど私の得意なことを生かせる業務内容であること
そのため、Kaienが運営している発達障害に特化した求人サイト「マイナーリーグ」の求人に応募先を絞りました。
加えて、マイナーリーグであれば、Kaienスタッフから推薦文を書いていただけることも私にとって大きな利点でした。
私は就労経験がないため、実績と言えるものが何もなく、それが就活において大きなウィークポイントであることがわかっていたからです。
求人への応募と履歴書
マルチタスクが苦手なことは自身の障害理解を深めるなかでわかっていたので、応募先は何社も出すことはせずに本当に行きたい2社に絞りました。
履歴書を作成する際に気をつけたことは、複数の講師の方やスタッフさんに履歴書を確認していただくことです。
障害特性の欄は福祉に詳しいスタッフの方に、志望動機の欄は応募する企業の業界に詳しい講師の方に、自己PRの欄は普段の訓練を見てくださっている拠点の講師の方に、と重点的に見てほしい箇所を事前に伝えて、何度も修正して完成させました。
面接練習
想定問答集を作成し、何度も面接練習を受けました。
面接練習を受けることで、伝えたい内容がしっかりと伝わっているかを確認することができ、伝わりづらい箇所を講師の方と一緒に考えながら修正することができました。
特に気を付けていたことは、講師やスタッフからの客観的な評価を交えて話すことと、具体的なエピソードを交えて話すことでした。
採用面接
実際に面接を受けて驚いたことは、面接の時間がとても長いことと、デザインやITスキルに関する質問の何倍も自身の障害理解についての質問が多いことです。
小学生の頃から振り返って学生時代にはどのような特性があったか、どのようなことで困っていたかを事細かに聞かれ、特性への自分なりの対策方法についてもかなり突っ込んで聞かれました。
1次面接から最終面接に至るまで、毎回面接時間が1時間近くととても長く、面接練習では予想していなかった質問も多くありましたが、それまで障害特性と自己理解にしっかりと取り組んできたおかげで、詰まることなく全ての質問に答えることができました。
企業実習
第一希望の企業で1次面接、2次面接と進み、企業実習に行けることになりました。
実習では実務に近いWebバナー課題などを行ったのですが、思ったよりも難しく、とても苦戦しました。
実習の振り返り面接では、「現時点ではスキルが足りていない。もし入社したらかなり勉強しなくてはいけないと思う。」とはっきり伝えられました。
さらに、「自分自身でどこが足りていないと思うか。その足りていないところをどんな練習をしたら出来るようになると思うか。」と尋ねられました。
この質問に対して、しっかり自分の言葉で、
- 実習を通して自分のスキル不足を痛感したこと
- 現段階で足りないスキルは何か、なぜそう思ったか
- どのような練習をしたらそのスキルを身に付けることができるか
を伝えることができました。
生活訓練から就労移行支援まで1年半近く自己理解に努め、面接練習やキャリアカウンセリングを繰り返し行っていたからこそ、この質問をされたときにすぐに自分の言葉で返すことができたと思っています。
自分の言葉で伝えられたおかげで、面接官の方から「自分が出来ないところとその改善方法をしっかり説明できているので、入社してからも伸びて行けると思う。」という言葉をかけていただき、和やかなムードで実習を終えることが出来ました。
そして、結果的に実習選考も通過することができ、社長との最終面接を経て、デザイナー職での内定をいただくことができました。
最後に
私は今まで障害特性による失敗を数えきれないほどしてきました。失敗体験が積み重なるたびに、さらに自信がなくなっていき、挑戦する勇気すらなくなり塞ぎ込んでしまった時期もありました。
けれども、Kaienに通い始めてから、
- 自分が何が原因で躓いていたのか
- できる対策は何か
- 実際に対策を行ってみてどうか
をスタッフや家族と何度も話し合い、考えてきました。
そうして一つずつ躓きを解決していく中で、
- 自分がどんな環境であれば安定して働くことができるのか
- どのような業務であれば社会に(会社に)貢献することができるのか
が少しずつですが見えてきました。
また、
- 休まずに毎日通所できた
- 訓練で褒められた
- 自分の意見が採用された
といった小さな成功体験を積み上げていくことで、段々と自信をつけることができました。
Kaienは、訓練の中で小さな成功体験をいくつも積み上げ、大きな自信に繋げていける場所です。
Kaienにいる間はたくさん挑戦して、たくさん失敗して、たくさん考え、たくさん乗り越えていってください。
その先にきっと、あなたらしい未来が見えてくると思います!
以上です! ありがとうございました!